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米の要求に反発 新興国「主権にかかわる

の要求に反発 新興国「主権にかかわる












8日に行われた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の首脳会合は、交渉が難航している状況を改めて浮き彫りにした。TPP交渉は「21世紀の通商協定のモデル」を目指し、従来の経済連携協定には含まれていない分野まで幅広く対象にしている。それだけに各国の利害がぶつかりやすく、容易に妥結できない図式になっている。

最高水準の協定
 交渉が難航している要因の一つは、その枠組み自体にある。TPPは、関税撤廃などを通じた貿易の自由化に加えて、人道的に問題がある労働環境をなくすためのルール作りなど、世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)でも扱っていない分野を対象に含めている。
 「通商協定の中で最高の水準」(ケリー米国務長官)を目指しているからだ。
 しかし、交渉範囲が幅広いことで、妥協も難しくなっている。米国は、ベトナムやマレーシアなどが導入している国有企業の優遇策や、マレー系住民への優遇政策「ブミプトラ」の撤廃などを事実上迫っている。外国企業と国有企業などの競争条件を平等にすることで、米企業のアジア展開を後押しする狙いがある。
 これに対し、王族関係企業を多く抱えるブルネイや、名目国内総生産(GDP)の3割を国有企業が占めるベトナムなどは、国体の根幹にかかわりかねない要求だけに、猛反発している。
 マレーシアのナジブ首相はブミプトラ政策の保護を念頭に、「主権にかかわることは慎重に議論する」と強調した。

読み違い
 TPPに参加すれば、各国は世界最大の経済規模を持つ米国に無関税で輸出できるようになる。ベトナムなどの新興国勢は、TPP効果で投資先としての自国の魅力が高まり、外資系メーカーなどの誘致競争で周辺国に優位に立てるとのもくろみから、TPP交渉に参加した。
 一方の米国は、年末までの妥結目標にこだわりながらも、新興国などに市場を開放する見返りとして、相手国市場を徹底的にこじ開ける姿勢を堅持してきた。
 米国はかつて、市場が小さいために貿易効果があまり見込めないシンガポールとの自由貿易協定(FTA)交渉でも、金融サービス市場を米銀向けに開放させるなど、交渉の手を緩めなかった。今回、新興国側は米国がここまで強硬に出てくることを読み違えたフシも否めない。

一括交渉権
 オバマ大統領が、米議会から通商一括交渉権(TPA)を得ていないことも交渉に影響を及ぼしている。
 TPAは、米政府が外国政府と結んだ通商合意に対して、大統領が議会に無修正で承認を要求できる権限だ。議会に合意内容を認めてもらえない可能性が低くなり、米政府は交渉を柔軟に進めやすくなる。
 新興国側は、現時点で仮に米国に譲歩して交渉を妥結させても、議会承認が得られず白紙撤回される事態も警戒している。ドーハ・ラウンドや気候変動枠組み条約の協議に象徴されるように、新興国と先進国による共通ルール作りの交渉は、利害が対立して暗礁に乗り上げるケースが目立つ。TPP交渉も、そうした図式に陥る懸念が出ている。(インドネシア・バリ島ヌサドゥア 辻本貴啓、水上嘉久)

(2013年10月9日  読売新聞)
 

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